行政のデジタル化とIT弱者への配慮

行政のデジタル化に反対される意見の中に「デジタル機器を使えない人もいるから」というものが多くあります。スマホやパソコンが使えないとデジタル化に置いてきぼりにされる人が困るかもしれないということを心配しているのだと思います。

しかし、今回始まる行政のデジタル化政策について言えば、きょういま現在のスマホやパソコンを前提にしなければならないということは全くないのであって、その入口・出口は他のモノでも全然いいのです。

例えばテレビがその役割を担ってもいいです。

朝起きてテレビをつけた瞬間、区役所や税務署やその他行政機関などからのお知らせが、文字やイラスト、音声で届く、といった機能を組み込むことだって十分考えられます。
そして何か手続きしたいと思ったときには
「引っ越してきたので転入届をしたい」などのようにとテレビに向かって言うだけで、その手続きが完了してしまうといったシーンも実現可能です。

テレビ以外にも、最近普及し始めた【スマートスピーカー】でもいいかもしれませんし、何らかの「デジタル手続き用の機械」が発売される可能性もあります。

もちろんスマホやパソコンも、飛躍的に進化して、今とは比べものにならないくらい使いやすいモノになることも十分考えられます。

昔のパソコンのようにキーボードをカチャカチャ打って入力するしか方法がなかった時代は終わろうとしています。(終わっています)
ユーザー名、ID、パスワード、暗証番号、そんなものもいちいち入力しなくても、テレビの前に座った瞬間にあなたであること理解してもらえるようになります。(なっています)

要は今後、デジタル化政策が具体化していく中で、いわゆる【IT弱者】と言われる方々に対する優しい配慮をどういった形で盛り込んでいくかということですが、今回の改革にあたっては河野、平井両大臣そして菅総理には民衆の気持ちを汲んでいただける【想像力】のようなモノを感じるので、個人的にはその辺りは期待できるように思っています。

結論、
『今のスマホやパソコンが使えないから(わからないから)デジタル化されると困る』
という心配はいらない

と申し上げたいと思います。

マイナンバーカードをデジタル化するべき

マイナンバーカードをデジタル化するべきだと思う。


免許証も保険証もデジタル化の考えがある中、マイナンバーカードこそ率先してデジタル化したら良い。

なぜカードの発行にこだわるのか?
持ち歩かせようと考えるのか。

物理的にカードを管理すること自体、アナログなイメージでデジタル化のイメージに反しているように感じる。
(それでもカードなのは、すでに稼働している住民票発行サービスや納税サイトなどに関わる既得権益の兼ね合いやそれらを進めてきた省庁の意地のようなもに起因するのか?)

 

マイナポイントも本来個々のマイナンバーに紐付いてるはずなのに現状はマイナンバーカードに紐付けることになってしまっている。手続きの煩雑さもあって足かせをはめることにしかならず、かえって【マイナンバーイコール難しいもの】とのイメージが先行して、マイナンバー自体のさらなるイメージダウンになりかねない。

 

マイナンバーとそれに紐づく個人情報などはデータ化してシステムの中で管理すれば良い。
そうすればデータの守り方について、生体認証を含め、いくらでもアップデートできる可能性が生まれる。
物理カードでは一旦発行されてしまえば、どうすることもできない。万一悪意の技術を持つ人間に渡ればキャッシュカードやクレカと同じ。痕跡をほぼ残すことなく好き放題できてしまう。
しかも一見したところ、今のマイナンバーカードの仕様は券面にナンバーが表記されてしまっており、さらに4桁6桁以上の暗証のみと信じられないお粗末さがあるように見受けられ不安を感じる。

 

結論として、
マイナンバーの活用はやるべきだが、
マイナンバー「カード」を普及させようとする方針はすぐにでも見直すべき。

 

マイナンバーカードの普及は必要か?


 内閣府によると
マイナンバーとは
「日本国内の全住民に指定・通知されている12桁の番号です。」
としています。
つまり日本に住んでいる人は全員それぞれマイナンバー(12桁の番号)をすでに割り当てられているのです。マイナンバー自体は国民全員に否応なく付与されており、日本に住んでいる限り「持つ・持たない」の選択肢はありません。

 そして
マイナンバーカード
マイナンバーの通知後、個人の申請により交付される顔写真入りのプラスチック製カードです。」
と説明されています。
こちらは「持つ・持たない」は個人の自由です。
マイナンバーカードは上にもあるように、単なるプラスチックでできたカード*1です。そのカード面にマイナンバーが書かれています。
マイナンバーカードを持つメリットは、
カード表面にマイナンバーがかかれているので自分のマイナンバーをすぐ手元で確認できることと顔写真がついているので公の身分証明書になります。*2またICがカードに埋め込まれておりその中に多少の個人情報が記録されています。
デメリットは紛失したり盗難に遭ったりしたときに自分のマイナンバーが知られて悪用される可能性があることです。これは銀行のキャッシュカード、クレジットカード、免許証などと同じです。

結局、マイナンバー自体が危険なのではなく、マイナンバーカードが悪意を持った人物に渡りマイナンバーに紐づく個人情報が悪用されることが心配なのです。
したがって、そもそもマイナンバーをカードに表示したり、記入したり、保存したり、といったことをやめてしまえばそういった心配はなくなります。


 マイナンバーカードの仕様はもう古い

たとえば、銀行のキャッシュカードには券面に口座番号が書いてあり、マイナンバーカードには券面にマイナンバーが書かれています。
またどちらも暗証番号(パスワード)が設定されており、たやすく悪用されないようになっています。
両者はこのような面でよく似ていおり、実はマイナンバーカードの実体(しくみ)は普通の銀行のキャッシュカードと大差ないのです。
だからキャッシュカードと同じように紛失したり盗難に遭ったりしたらその情報が抜き取られ盗まれる可能性があります。
情報が盗まれた結果、キャッシュカードの場合は銀行の預金が盗られる可能性がありますし、マイナンバーカードの場合は個人情報そのものが盗られる可能性があります。
セキュリティの面でもマイナンバーカードはキャッシュカードと大差ないとされており、これから普及を目指すモノとしてふさわしいかどうか疑問視されています。*3
こういったことから、何が何でもマイナンバーカードの普及を目指すという方針が良いのかどうかもう一度考え直すべきではないかと思います。


■カードが必要か?

「カードを紛失」したり「カードが盗難」に遭ったりすることで被害を被るのは『カード』が存在するからであって、当たり前ですが物理的な『カード』そのものが無ければ起きない被害です。
したがって理想としてはそういった物理的な『カード』を無くせば良いのです。そうすれば上のような情報の悪用問題はなくなるはずです。
ご存じのようにもうすでに銀行の取引などはスマホで完結する時代になりつつあります。
それにならってマイナンバーもスマホの中に保存してマイナンバーを使ったサービスなどもスマホ内で完結するようにすればよいというアイデアが出ています。
そうすればスマホと別にマイナンバーカードを持ち歩くという手間が省け、カードを無くすといったケースを減らすことができます。


マイナンバーカードのスマホ化の課題と有利性

もちろんスマホを紛失したり、盗難に遭ったりすることで悪用される危険性についてはカードと同じことが懸念されます。
したがってマイナンバーをスマホに入れるにあたっては仮にそういった事態になっても情報を守れる仕組みを導入することが何よりも重要です。
その点(セキュリティ)についてはカードと同じ思想が不可欠です。
ただカードの場合にはハードウエア的にそれほど大掛かりなセキュリティ対策を組み込むことは出来ませんが、スマホについてはマイナンバーの保存や利用時のセキュリティについていくらでも工夫をすることが可能です。
こういった意味でもレガシーなカードよりもスマホマイナンバーを管理する可能性についてもっと議論されるべきだと思います。


 ■マイナンバーをスマホ統合

ここまで述べたように、
行政もいまのように「マイナンバーカードの発行数を増やす」ことのみに固執することなく、スマホ連動などでさらに利用者の利便と利益を最大化するべく、柔軟に方針を考え直してみるべきではないかと考えます。*4
兎にも角にも、遅かれ早かれこれから、ある意味『カード』という過去の遺物を持ち歩く時代ではなくなってゆくことは確実です。
クレジットカード、キャッシュカード、免許証、保険証、すべてその情報さえ手元にあればいいのであって、『カード』は必要ないのです。
その入れ物としてスマホは最高に便利で最適な環境を提供すると思います。 


■カードを所持して管理する姿こそアナログチック

マスコミなどでもマイナンバーカードの普及率が低いことが問題であるとされていますが、カードの普及率とマイナンバーの活用が進んでいないこととは全く別のハナシなのです。
極端に言えば、マイナンバー12ケタと暗証番号4ケタを各自が記憶して各行政サービスなどをスマホやPCから利用しようとするときにその都度入力することができれば、カードは必要ないのです。
これらの12ケタなり4ケタなりを記憶しておく場所としてカードを使うかスマホにするかというハナシでなのです。
お財布の中を確認してみてください。
キャッシュカードやクレジットカード、免許証などもはいっているかもしれません。その他、行きつけのお店・スーパーのポイントカードや診察券、ジムの会員証、社員証、保険証などが入っている人も多いでしょう。
わたしはこういったカードを複数所持して手作業で管理すること自体がアナログチックでデジタル化の思想に逆行してるように感じています。
ご存じの方も多いと思いますが、それらのカードはどんどんスマホに入るようになっています(スマホのアプリ化しています)。
マイナンバー(マイナンバーカード)がそうならないでいる理由は無いと思うし、そうなっていくことがおそらく無理のない流れではないかと思うのですが、
いかがでしょうか? 



マイナンバー




*1:キャッシュカードや運転免許証に似たサイズ・質感

*2:住民票がコンビニで受け取れるといった「マイナンバーカードがあれば利用できるサービス」がいくつか提供されており、これを利用できるというメリットもあります

*3:ハードウエア的に比較的古い技術

*4:おそらく、マイナンバーカードを所持することを前提に作られたサービスがすでに動き出しており、その路線をこれからも踏襲していきたいというのが省庁の考えだとは思いますが、万一そうならこの際その辺りもデジタル庁に打破していただきたいと期待しています

政府系オンライン窓口のなんじゃこら? ~ 行政のDXへの思い

国や行政機関が設置しているオンライン申請のホームページ、たとえば
中小企業庁の持続化給付金申請
国税庁国税電子申告・納税システム(e-tax)
法務省の登記ねっと
などを利用したことがあるでしょうか?
 
これらのサイト、基本的に何をするにもマイナンバーカードが必要です。
そのためPCで操作しようとするとICカードリーダを用意する必要があります。
一般的利用者からすると敷居が高いです。
 そもそも見た目から
「何をしたらいいか、どうすればいいのか」
きわめてわかりにくい印象です。
 
 
法務省の登記ねっと
 
法務省の登記ねっと(登記・供託オンライン申請システム)の利用時間は
平日 午前8時30分から午後9時までなのだそうです。
オンライン申請の利点は24時間いつでも利用可能というのも利点の一つではないかと思うのですが
お役所のサーバー(コンピューター)は公務員の勤務規定に準じるようです。
さらにこのサービスを利用するにあたっては、前もって『事前準備』ということで
『何か正体不明のアプリ』を事前に自分のPCにインストールすることが求められます。
例えば、民間の銀行に口座を申し込むサイトなどで必要項目を入力する前に
何らかのよくわからないアプリをインストールする必要があるとしたらどうでしょうか?
そんなややこしい、怪しいシステムを使う気が起きるでしょうか?
Webアプリケーションの本質(ブラウザ一個で完結する)を理解しておらず
オンラインサービスとしては常識的ではないサイトと考えられます。
いずれにしても「利用者のため」というより明らかに「運用側のお役所や業者などの都合」が優先されている印象を持ってしまいます。
 
 
中小企業庁の持続化給付金申請 
 
持続化給付金申請窓口ホームページで申請しようとすると、添付書類として
給付金の受け取り口座(振込先の銀行口座)の通帳の写真?が必要となります。
これは何のために必要なんでしょうか?
本人確認書類として別途運転免許証の写真などを添付しますので本人確認はそちらでできるはず。
こんな意味不明なことをするから
マイナンバーと銀行口座のひもづけが目的なんじゃないか」
「勝手にマイナンバーと口座がひもづけられちゃうんじゃないか」
などと勘ぐられるんじゃないでしょうか?
結果、ますますマイナンバーのイメージが悪くなるような気がしてしまいます。
 
 
◎HER-SYS
(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)

 新型コロナウイルス感染者等情報を各医療機関や保健所などが入力しやすいように、
そして入力された情報が即座に集約できることなどを目指して構築されたサービスなのだそうです。
こちら、入力項目が130項目もあり使えないそうです。
そういった声を踏まえて40項目まで減らしたそうです。
それでも現在も普及率は数パーセントらしいです。
東京都医師会としては「これは使わない」と決めてしまっているそうです。
理由は医師や看護師、医療機関の負担が大きすぎるからとのことです。
でも、とりあえず至急に取りまとめるのに必要な項目としては、
その日発生した感染者の「年齢」「性別」「居住都道府県」
ぐらいではないかと思うのですがいかがでしょうか。
それ以上の情報については余力に応じて後で追加入力するなどではダメなのでしょうか?
使う側の立場や現状を考えてないからこういう、大仰ではあるけれども使えない
システムができあがるのだと思います。
 
 
 
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■IE専用問題
 
そもそもこれらのサイト、ほぼすべてなぜか対象ブラウザは
 マイクロソフトインターネットエクスプローラー(IE)のみとなっています。
IE専用です。
現在たくさんの人が利用しているChromeは対象ブラウザではないため使えません。
なぜなのでしょうか?
まさか、大昔Windowsが出てきた時代に言われたIEが標準ブラウザーという情報を
未だに引きずっているのでしょうか?
IEしかダメとする積極的な理由は何も考えられないです。
作り手側の立場で言えば多くの場合「IE専用」にする方が手間がかかります。
利用者からすればChromeを通常使っていて、いざ必要項目を入力しようとしたところで
ブラウザをIEに切り替えることが必要になります。初心者の場合この操作が結構困難な操作となります。さらにChromeとIEの操作方法の違が違うことに少なからず戸惑うことになります。
 
開発した業者の都合なのかお役所の担当者の好みなのか?
単にChrome対応をケチっているのか?
一番考えられるのは役所で使っているブラウザーがIEだから自分たちが使いやすいようにということが考えられますが、万一そうであれば使う側の利便性を第一に考えていただきたいと思います。 *1
 
同業者として大変疑問を持たざるを得ないのが、これらのシステムを検収(開発会社に対して"これでいいですよ"というお墨付きを与えること)した各役所の担当者は何を見てどこを評価してハンコを押したのかということです。
 
 
■浮世離れしてます
 
e-taxにしてもHER-SYSにしても
ヒトコトで言えばまさに
「浮世離れしている」
非常識なUI(ユーザーインターフェース=利用者が入力する方法)になっていると評価せざるを得ません。
利用者にとって嫌がらせとも思える位の障壁・障害が至る所に仕組まれています。
本当はこのシステムを使わせたくないんじゃないかと勘ぐりたくなるくらいです。
これらのシステムの開発にかかわった役所側の担当者、そして開発を実際に行った業者は
何のために、何を目指してこのシステムを作ったのかを理解してないのではないでしょうか。
 
 
■デジタル時代のパスポート
 
マイナンバーについては新閣僚の平井卓也デジタル改革担当相も
「誰のために作られたシステムなのかを意識して根本から作り直す必要がある」
という趣旨のことをおっしゃっています。
もっともだと思います。
元々国民総背番号制からの発想を引きずっている現状のマイナンバーの悪いイメージを払しょくするためは、根本から考え直して制度を作り直す必要があります。
平井大臣は
マイナンバーをデジタル時代のパスポートとして普及させたい」
とおっしゃっていますが、そのようなブランド化は大変有効な一手であると考えて大賛成するとともに心から応援したいと思います。*2
ぜひ実行していただきたいと思います。
 
 
■誰が作った?
 
また、上述のホームページについては各役所内ですべてを作成したわけではないと思います。
普通に考えて『どこか専門?の業者』などに外注して作成したと考えられます。
その業者はどこなのか?
作成した業者などについて、その「社名」などは公表されていますでしょうか?
そしてこうした業者はどのような過程で選定されているのでしょうか?
議員さんのコネとか既得権の関係で選ばれてたりするのでしょうか?
開発業者にとってはこういう国や公的機関からのシステム開発の受注などの実績は自社の「ウリ」となりますので、積極的にプレスリリースなどで大々的に公表してもいいはずなのですがそういった情報にほとんど接することがありません。*3*4
大変ナゾであり、同じような業態を営む会社の代表としてはとても知りたい情報です。
 
 
■わたしなら。。。
 
不遜に聞こえることを承知で言わせていただくなら、
上で触れたサイトを見ていると「この程度のクオリティならわれわれ零細な弱小システム開発業者でも十分参入できるという感じがしてなりません。
少なくともそれらより利用者を意識した利用者のためのサービスを創る自信があります。
 
コロナ禍を通して日本社会にも行政のデジタル化の必要性が認識されその気運が醸成されつつあります。*5
変われるとしたら今しかないと思います。
今回の菅内閣のなかで今後、平井デジタル改革担当相・河野行革大臣が行う行政改革に本当に期待しています。彼らならば今度こそやっていただけそうな気がしています。
 
当社としてもそのお手伝いをさせていただきたいと考えており、
その一翼を担うことができるよう各方面にアプローチしていきたいと考えています。
(今年の当社目標)
  
                                                                                                         合同会社んぱんぱ 代表 のはらたつお     
                                                                                                                                                               
                                                                                                                                                                       

 

*1:事前準備でインストールしなければならないアプリがIE専用となっていることが大きいのかもしれません。しかしそれもChrome対応に改修すればよいだけでありユーザーファーストの観点からそれを躊躇するべきではありません。そもそも『事前準備』なる意味不明なものをやめればいいのです。

*2:利用者像(ペルソナ)の設定やブランド化はマーケティングの考え方の中で必ず検討すべき重要な項目となっています。

*3:単に私の調査力不足、勉強不足なのかもしれません。

*4:こちらで実績として公開されています。https://www.alpha-se.com/business_develop.html

*5:ただしデジタルリテラシーのレベルが比較的低い層には未だ理解が不足している状況もあります